入管難民法の問題点を政府側の視点から

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昨日、政府が今国会での成立を断念するという旨のニュースが流れた入管難民法ですが、これに関しては様々な記事が公開され、それが掲載されたyahooニュースのコメント欄にもかなりの反響がある場合が多いように思えます。

入管難民法の改正案が政府によって取り下げられるようです

ですが、先日も少し触れたとおり、ニュースサイト等で見ることが可能な記事は「反対」の意見を紹介したり、そもそも反対を主張するものばかり。

逆サイド、つまり今回は諦めた入管難民法の改正を進めようとしていた政府側や、それを支持する立場からの主張などが紹介されているものはまるで発見することができませんでした。

となると一方の主張しか見ることが叶わず、自ずと偏った情報ばかり得ることになってしまいます。6月の半ばからスタートする申請取次研修が上手くいきさえすればですが、行政書士として国際業務に関与する機会が生じる可能性がある自分にとってこれはあまり芳しくない。

ということで今回は、政府側である出入国在留管理庁のHPから「入管法改正案Q&A(リンク先は出入国在留管理庁HP)」を参考にさせて頂き、その立場からの見解を調べ、それを今後始まる学習の基礎知識のひとつに加えようと思いました。せっかくですのでその内容をブログ記事として残しておきます…

Contents

長期収容が致し方ないと考えるのは…

さて、まずは入管難民法の問題として真っ先に挙げられる「長期収容」について見ていくことにしましょう。

よく指摘されているのはこれが人権侵害につながっているということ。もちろん問題の原因はその先の待遇によるところが多いのだとは思いますが、実際にどうなっているのかを見たわけではないためそれについては全くわかりませんし考えることもできません。

ということで、ここではその「長期収容問題」のみを扱っていきます…

まず、収容すべきと判断された外国の方の収容期間には、現状で上限というものが設けられていません。つまり一定の期間、例えば「○○ヵ月経過したら自動的に解除」という制度は存在していないということです。

それで、どうして上限を設けずにいるのか?それが人権侵害につながる長期収容の原因となっているのではないか?という疑問に対する政府側の答えとしては、もし収容に上限を設けた場合、いつか収容を解かれることに期待して退去を拒み続けることを誘発してしまうおそれがある、というものです。

また、この上限なしの収容が国際的な標準からズレたやり方だという指摘に対しても、他に同じような制度で運用している国家を挙げて、そのようなことはないと否定しています。

なるほど、政府側の見解では長期収容となってしまっても、それ以上のリスク、つまり本来は退去すべき人が退去を拒否することによってメリットが得られる状況になり、頑なな拒否を助長してしまうことになるから、こればかりはもう仕方がないという感じですね。

長期収容の原因は

では、そもそもどうして長期収容をされる方がでてしまうのでしょうか?収容期間には上限がなくとも、そもそもそんな長期間に渡って収容しなくてはならない「原因」さえ排除してしまえば良いように思えます。

ですがこれにはいくつか問題があるようです。まず、基本的に残念ながら退去しゃくてはならないということが確定してしまった方については、その退去のときまで施設に収容しなくてはならないルールになっています。そして先程も触れたようにそれには期間の上限というものがありません。

ですが、その退去がスムーズにいかないケースというのも存在しているようです。それが参考にさせて頂いた出入国在留管理庁のQ&Aにて、退去を拒む外国の方を強制的に国外に退去させる妨げとして3つ挙げられていました↓

なぜ、日本からの退去を拒む外国人を退去させられないのですか

(1)難民認定手続き中の者は送還が一律停止

(2)退去を拒む自国民の受取を拒否する国の存在

(3)送還妨害行為による航空機への搭乗拒否

参考 入管法改正案Q&A

ということで3つ、その中での詳しい内容についてまで知りたい場合には、リンク先に詳細な説明がありましたのでそちらを参照して下さい。

それで、収容期間に上限がないこと、送還すべき外国の方は原則収容すること、そして上記退去させられない理由が相俟って、問題となっている長期収容という事態が発生してしまっているという感じなのでしょう。

この原因のどれかひとつでも解消することができれば、制度を変えてどうにかできればこの問題は解決へ向かうのかも知れません。です、政府が今回の改正案を通すのを諦めたことからもわかるように、皆が納得する形にするのは非常に困難なことのようです…

日本の難民認定率は低い?

それと、この問題が語られる際には同時に耳にすることが多いのではないかと思いますが、「日本の難民認定率が異常に低い」という点も早急に改めるべきだとする内容の中に挙げられがちです。

これに関しては参考にさせて頂いた出入国在留管理庁のページの最後で、日本の難民認定率が欧米よりも低いのは、地理的要因によるものもあり、その率だけで単純に比較することが相当でないとの見解が示されていました。

確かに大量の難民を発生させているのであろう中東近辺の問題があり、そこから地続きとなっている欧州と、最低でも日本海を渡らなければ入国することすら叶わない日本とでは、その流入してくる「難民認定希望者」の数も、そして属性も大きく異なってくるはずです。

となるとやはり、本来は難民として認められるような理由がないにも拘らず、申請だけを繰り返して日本に滞在しようとしている方が多い「らしい」日本と、本当に街を破壊され、必死の思いで移動した「難民認定希望者」の多い諸外国との比較は意味を成さないのかも知れません…

もちろんこれは政府側の主張、問題となっているどの要素にも別の意見が存在する

ということでした、参考ページにはまだまだ興味深い内容が盛りだくさんでしたが、ここでそれを書いているとかなり長くなってしまうので今回は割愛。また機会があれば、問題になっている入管難民法全体ではなく、個別の論点を取り上げて書いていくことがあるかもです。

なお、一応最後に書いておきますが、今回の投稿は全て政府側の意見を参照にしたものであり、当然同じ問題についてこれとは異なった見解を持つ方も多いはずですし、そもそも居なければ議論にさえなりません。

ですがもちろん政府側にも見解があり、適当に「まあこれで良いにするか…」ぐらいのノリで色々と案を出しているわけではないのは事実。優秀な方々が大人数で練りに練った案を出しているはずです。

もちろん逆の見解を持つ方々も同じであり、どちらの意見にも反対意見が伴い、時として強い口調で相手を罵っているようなコメントや、そもそも反対意見を持つ方を蔑むような記事なども見かけます。

ですがそういうのは相手側を萎縮させたり、逆に怒らせてしまったりと、せっかくの議論がそこで途切れてしまう原因になるかと思います、ですので可能であれば控えた方が良いかと…それも人それぞれなのかも知れませんが…とにかく今回はここまでとしておきます。

行政書士おぎ事務所

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